AI外観検査 少量NGデータ対策

NG画像が少ないときの対策5つ
AI外観検査を諦めない方法

NG画像が10枚以下でもAI外観検査を導入する5つの実践的な対策を解説。良品学習・VLM・ハイブリッド検査の組み合わせ方。

2026-04-10 / 最終更新 2026-04-24 / Nsight Inc.
01
「NG画像がないからAI検査は無理」は過去の常識。現在はNG画像0枚でも始められる良品学習・VLM合成生成などの手法が存在する。
02
5つの対策(良品学習・データ拡張・VLM生成・転移学習・ハイブリッド検査)を組み合わせることで相乗効果が生まれる。
03
VLMは本番判定には乗せず、NG画像自動生成・アノテーション自動化の裏方として活用するのが現実的な構成。
― 目次
  1. 「NG画像が足りないからAI検査は無理」は過去の常識
  2. 対策1:良品学習(異常検知モデル)── NG画像0枚で開始
  3. 対策2:データ拡張 ── 既存NG画像を最大限活用
  4. 対策3:VLMによるNG画像自動生成 ── 0枚から仮想NG画像を作る
  5. 対策4:転移学習 ── 他の知識を流用する
  6. 対策5:ハイブリッド検査 ── AIだけに頼らない
  7. NG画像不足を解消する5つのアプローチまとめ
  8. 業界別の典型対応
  9. 少量NGデータでの精度確保のコツ
  10. よくある質問
― 01 / はじめに

「NG画像が足りないからAI検査は無理」は過去の常識

「NG画像が10枚しかないからAI検査は導入できない」──これは2023年頃までの常識でした。従来のディープラーニング(CNN)は1クラスあたり100〜500枚の教師データが必要で、NG画像が少なければ精度が出ないのは事実でした。

しかし現在は、NG画像が極端に少ない状況でもAI検査を導入する方法が複数存在します。ポイントは「NG画像を集める」ことだけに固執せず、「NG画像がなくても動く仕組みを組み合わせる」ことです。

不良率が低い高品質生産現場ほど、NG画像(不良サンプル)が集まらない。AI検査導入の最大の障壁となるこの問題への解決策を体系化します。

― 02 / 対策1

対策1:良品学習(異常検知モデル)── NG画像0枚で開始

良品画像だけで学習し、良品と異なるものを「異常」として検出する手法です。PatchCoreやAutoEncoderが代表的なアルゴリズムで、NG画像が0枚でも学習を開始できます。

ある精密部品メーカーで良品学習モデルを導入した際、良品画像200枚のみで学習したモデルが検出率87%を達成しました。ただし過検出率が22%と高く、良品の5分の1以上がNGと誤判定されました。良品学習は「見逃しを防ぐ」には強いですが、「過検出を抑える」には弱い。対策2〜5と組み合わせて精度を上げていきます。

― 03 / 対策2

対策2:データ拡張 ── 既存NG画像を最大限活用

手持ちのNG画像が少量でも、データ拡張によって学習データを増やすことができます。回転・反転・輝度変化・ノイズ付加などの幾何学変換や色調変換を組み合わせ、1枚のNG画像から数十枚の学習データを生成します。

ただし、意味のない変換は逆効果になることがあります。例えばキズの方向が重要な検査では無制限の回転拡張は避け、実際にあり得る姿勢変動の範囲内で拡張することが重要です。

― 04 / 対策3

対策3:VLMによるNG画像自動生成 ── 0枚から仮想NG画像を作る

VLMが不良パターンを理解し、良品画像から仮想NG画像を自動生成する手法です。NG画像が0枚でも生成を開始でき、アノテーションまで自動化されます。

ある化粧品メーカーのラベル検査では、実物NG画像8枚の状態からVLMで各パターン60枚、合計300枚の仮想NG画像を生成。これを学習に使い、初期モデルで検出率92%を達成しました。

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― 05 / 対策4

対策4:転移学習 ── 他の知識を流用する

ImageNetなど大規模データで事前学習したモデルを、自社のデータでファインチューニングする手法です。「画像の特徴を抽出する能力」は事前学習で獲得済みなので、少量のデータでも高い精度を出せます。

実務上のポイントは、事前学習データと自社データの「ドメインギャップ」です。自然画像(犬や猫の写真)で学習したモデルを金属部品の検査に転移する場合、浅い層(エッジやテクスチャ)の知識は流用できますが、深い層(物体の概念)の知識は役に立ちません。製造業向けの事前学習モデルがあればベストですが、現状ではImageNet事前学習+ファインチューニングが最も一般的です。

また、類似品種・類似業界のNGデータを転移することも有効です。少量データで実用精度を確保できます。

― 06 / 対策5

対策5:ハイブリッド検査 ── AIだけに頼らない

全ての検査をAIに任せるのではなく、ルールベース検査(閾値判定)とAIを組み合わせるハイブリッド構成です。「明らかなNG」はルールベースで高速に弾き、「微妙な判定」だけをAIに回す。これにより、AIが必要とするNG画像の数を大幅に減らせます。

Nsightの検査システムはこのハイブリッド構成を基本としています。ルールベース+従来AI+VLMの3層構成で、各層が得意な検査を分担します。

5つの対策の組み合わせ方
Nsightでは対策3(VLMによるNG画像自動生成)と対策5(ハイブリッド検査)を軸に、対策1(良品学習)で初期スクリーニング、対策2(データ拡張)で既存データの活用、対策4(転移学習)でCNNの効率的な学習を組み合わせています。5つを単独で使うのではなく、組み合わせることで相乗効果が生まれます。
― 07 / アプローチまとめ

NG画像不足を解消する5つのアプローチまとめ

VLM合成生成

OK画像をベースに、VLMで人工的にNG画像を生成。少量実NGから数百枚に拡張可能。

異常検知(One-Class学習)

OK画像のみでモデル学習し、分布外を異常とする手法。NG画像なしでも実装可能。

転移学習

類似品種・類似業界のNGデータを転移。少量データで実用精度。

人工不良サンプル作成

OK品にあえて傷をつけて不良サンプル化。確実だが工数大。

段階的データ蓄積

運用開始後の実NGを継続蓄積し、定期的にモデル更新。

まとめ:NG画像が少ないことはAI外観検査の障壁ですが、克服不可能な壁ではありません。良品学習で0枚から始め、VLMで仮想NG画像を生成し、ハイブリッド構成でAIの負担を減らす。この組み合わせにより、NG画像が10枚以下でも実用的な検査精度を実現できます。

― 08 / 業界別対応

業界別の典型対応

業界主要手法典型データ量
食品VLM合成+転移OK500、NG生成200
自動車異常検知+VLMOK1000、NG少量
化粧品VLM+人工サンプルOK300、NG生成150
樹脂転移+段階蓄積OK500、NG30

※ 掲載の金額・単価は執筆時点の参考値です。実際の費用は要件・時期により変動します。

― 09 / 精度確保のコツ

少量NGデータでの精度確保のコツ

精度を上げるポイント

失敗を避けるポイント

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― 10 / FAQ

よくある質問

VLMは本番の検査判定に使えますか?

現時点では、VLMは裏方(NG画像生成・オートアノテーション・学習データ拡張)として活用し、本番判定は軽量モデルが主流です。

NG画像をVLMで生成する精度は?

実NGサンプル数枚から数百枚規模の学習データを生成でき、少量サンプル問題の解決に寄与します。

VLMによるオートアノテーションの精度は?

人間アノテーターの補助レベルで80〜95%の精度が出ます。最終チェックは人間が行う運用が推奨です。

― REVIEWED BY
嶋野(元キーエンス画像処理部門 開発)
キーエンス画像処理部門での実務経験をもとに、製造業の外観検査・画像処理に関する技術監修を行っている。会社概要 →

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