AI外観検査、どの技術を選べばいい?
AI外観検査の導入を検討する際、最初に直面するのが「どの技術を選ぶべきか」という問題です。ベンダーごとに異なるアプローチを提案してくるため、比較が難しいと感じる品質管理担当者は少なくありません。
本記事では、AI外観検査の主要な3つの手法を、現場の実情に基づいて比較します。
手法①:ルールベース画像処理
仕組み
あらかじめプログラムした条件(閾値・パターンマッチングなど)に基づいて良否を判定します。キーエンスやコグネックスなどの画像処理装置が代表例です。
向いているケース
検査基準が明確に定義できる対象(寸法、色差、有無判定など)。単一品種の大量生産ラインで最も効果を発揮します。
注意点
想定外の不良には対応できないため、新しい欠陥パターンが発生するたびにプログラム修正が必要です。品種が多い場合、パラメータ管理が煩雑になります。
手法②:Deep Learning(CNN)
仕組み
大量の画像データから特徴を自動学習し、不良を検出します。畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を用いた画像分類・物体検出が主流です。
向いているケース
ルールベースでは捉えきれない複雑な不良パターン(微細な傷、色むら、変形など)。データが豊富な大量生産品の検査に適しています。
注意点
精度を出すには品種ごとに数百〜数千枚の学習画像が必要です。特にNG画像の収集が困難なケースでは、学習データの準備段階で頓挫することがあります。
手法③:VLM+ハイブリッド
仕組み
VLM(Vision Language Model)で学習プロセスを効率化し、検査本体はルールベースとAIを組み合わせたハイブリッド構成で運用します。VLMはアノテーション自動化とNG画像生成を担い、人手による学習作業を大幅に削減します。
向いているケース
多品種少量生産、品種の入れ替わりが頻繁なライン、NG画像が少ない検査対象。従来のAIでは「コストが合わない」と判断されていた領域に特に有効です。
注意点
比較的新しい技術のため、実績あるベンダーの選定が重要です。VLM単体ではリアルタイム検査の速度が不足するため、ハイブリッド構成の設計ノウハウが必要になります。
3手法の比較一覧
| 比較項目 | ルールベース | Deep Learning | VLM+ハイブリッド |
|---|---|---|---|
| 初期費用 | ○ 安い(装置購入) | △ 高い(学習費用込み) | ○ 中程度 |
| 導入期間 | ◎ 1〜2週間 | △ 1〜3ヶ月 | ○ 2〜4週間 |
| 必要な学習データ | 不要 | 数百〜数千枚/品種 | 数十枚/品種 |
| 多品種対応 | △ 品種ごと再設定 | △ 品種ごと再学習 | ◎ 低コスト追加 |
| 複雑な不良検出 | △ | ◎ | ◎ |
| リアルタイム検査 | ◎ | ○ | ◎(ハイブリッド) |
| 運用の柔軟性 | △ | ○ | ◎ |
選び方のフローチャート
ステップ1:生産形態を確認
単一品種の大量生産 → ルールベースまたはDeep Learningが有力
多品種少量生産 → VLM+ハイブリッドを優先的に検討
ステップ2:不良パターンの複雑さを評価
シンプル(寸法・色・有無) → ルールベースで十分
複雑(微細傷・テクスチャ異常・形状変形) → AIベースの手法が必要
ステップ3:学習データの入手可能性を評価
NG画像が大量に入手可能 → Deep Learningが最高精度
NG画像が少ない・入手困難 → VLMによるデータ拡張が有効
まとめ
AI外観検査には「万能な手法」は存在しません。自社の生産形態、検査対象の特性、データの入手可能性を総合的に判断し、最適な手法を選択することが重要です。
Nsightでは、元キーエンスの画像処理エンジニアが検査対象を分析し、ルールベース・AI・VLMの中から最適な構成をご提案しています。